952 名前:1 ◆iXiOde3yG. 投稿日:2005/11/28(月) 17:06:59 wvRCTomwO
【愛されたかったブーン】

とある時代のとある村。そこにはとある青年がおりました。
彼は意味もなく村人に嫌われていました

母親の記憶の無い彼。
彼は愛された記憶がありませんでした。

なんで僕は愛されないの?

なんで僕は嫌われるの?

彼は悩んで悩んで食事も喉に通りませんでした


そしてある日を境に村人は彼に目も合わさず、罵倒の言葉さえ無くなりました

そして彼は決意するのです。

( ^ω^)「よし!決めたお!人々に愛されるために、認めてもらう為に、悪い魔王を倒しにいくお!ブーン!」

彼は旅立ちます


957 名前:1 ◆iXiOde3yG. 投稿日:2005/11/28(月) 17:15:55 wvRCTomwO
辿り着いた村。彼は相変わらず誰にも相手にされません。
『大丈夫、僕はこんなの慣れっ子さ!』と、彼は強がります。

歩いていたらこんな噂話を耳にします

村人『怖いなあ。森の一匹の人食い狼。誰か倒してくれないものか』

何か閃いた彼は森に向かいます

―――森―――

綺麗な花が咲き誇る美しい森
ブーンが花に手をかけようとしたその時

狼「ワオーン!俺は人食い狼だ!その花をむしるのならば!森に出ていかねば食べてしまうぞ!ワオーン!」

狼は尚も恐ろしく吠え上げます


961 名前:1 ◆iXiOde3yG. 投稿日:2005/11/28(月) 17:29:07 wvRCTomwO
( ^ω^)「……。花をむしるつもりはないお。僕は君に会いに来たんだお」

狼「何だと?お前は人食い狼に会いに来た?そうか分かったぞ。お前は猟銃で私を撃ちに来た!ワオーン!」

( ^ω^)「違うお。僕は君と友達になりに来た。君の目は僕と同じ寂しい目をしてる。そしてそんな君は人を食べるはずが無いお。…僕は一度も人に愛された事がないんだお。君の寂しさが解るんだお」

('A`)「嘘をつけ!だってお前は―――」

狼はぽろぽろと涙を流し、言葉の続きを言えません。
この狼は勿論人を食べた事などありませんでした。
この森の花をむやみにむしる村人の手を、花を守るためにカプッと噛んだだけなのです。
優しい心の狼は、それ以来村人に恐れられ、ずっと一人きりでした。
だから花を愛して花に愛されようと、村人から守ってきただけなのです。
狼はブーンに着いて行くことに決めました


( ^ω^)「ブーン!ブーン!」

('A`)「…、何をやっているんだ?」

( ^ω^)「僕は…いつか空を飛ぶのが夢なんだお!だから練習しているんだ」

('A`)「…。そっか。ブーン、君ならきっと飛べるよ」

ブーンを見る狼の瞳は、あの村人達のさげすむ目ではなく、優しい瞳でした


970 名前:1 ◆iXiOde3yG. 投稿日:2005/11/28(月) 17:53:39 wvRCTomwO
辿り着いた城下町。彼は相変わらず誰にも相手にされません。
そんな時、ブーンと狼はとある噂話を耳にします。

『あの御屋敷の離れの小屋に住んでる末娘。実母が亡くなっているそうな。それ以来、継母とその娘達にイジメられているらしい。可哀想に。可哀想に。』

何かを閃いた彼は御屋敷の離れの小屋に向かいます。

―――御屋敷の離れの小屋―――

末娘「あぁ、寂しい。私はこれから誰にも愛されない。お義理さんや義姉さん達にイジメられて生きていくんだわ。」

( ^ω^)「やあ。この戸を開けておくれ。君が愛されるために、やってきたお。」

末娘は戸を開けました

末娘「貴方は誰?私に何の用?」

( ^ω^)「僕はブーン。君の寂しそうな声が聞こえたからやってきたんだお。僕もイジメられてきたからその寂しさは解るんだお。さあ僕と一緒に旅立とう」


972 名前:1 ◆iXiOde3yG. 投稿日:2005/11/28(月) 17:54:54 wvRCTomwO
末娘「…。べ、別に寂しくないわ!!今の暮らしで満足よ!!…でも、誰かに愛されるなら話は別。貴方に着いていくわ。…その前に貴方はイジメられる訳無いわ…だって貴方は―――」

彼女の名前はツンデレラ。
何かを言いかけた彼女は、涙が邪魔をしてその先を言うことが出来ませんでした

彼女はブーンに着いていく事を決意します


( ^ω^)「ブーン!ブーン!」

ツンデレラ「何をしてるの?」

( ^ω^)「僕は空を飛ぶのが夢なんだお。だから練習してるんだ」

ツンデレラ「そう…。貴方ならきっと飛べるわ」

ツンデレラのブーンを見つめる瞳は村人達の様な冷たい瞳ではなく、暖かい瞳でした


978 名前:1 ◆iXiOde3yG. 投稿日:2005/11/28(月) 18:07:15 wvRCTomwO
いよいよ着いた魔王の城
一行は唾を飲み込み城の中に入ります。

( ^ω^)「僕の名前は内藤ホライゾン!悪いことをする魔王よ!僕はお前を倒しに来たお!!……!?」

(´・ω・`)「僕を…倒しに?…僕が悪いことを。それは?」

( ^ω^)「そうだお!!君は沢山悪いことをしたお!例えば――……おや?」

不思議とブーンは魔王のやってきた悪行が思い出せません。
それそのはず、魔王は生まれてこの方悪いことをしたことがないのです。
むしろ花や動物を愛する優しい心の持ち主です

(;^ω^)「………」

(´・ω・`)「………。僕は悪いことしたことなんかないよ…。」

( ^ω^)「じゃあなんで皆に怖がられてるお?誤解されてるお!!」

(´・ω・`)「それは…」

彼は恐ろしい魔王の息子として生まれ、魔王として育ちました。
だけど魔王の素質が無かったこの魔王は…
恐ろしくあるべき魔王らしからぬ、優しい魔王になったのです。

彼は身に覚えの無い深い大罪の意識に悩まされていました。
だから無理に人々の誤解を解こうとは考えませんでした。


979 名前:1 ◆iXiOde3yG. 投稿日:2005/11/28(月) 18:13:22 wvRCTomwO
( ^ω^)「そっか…じゃあ一緒に行くお!僕たちと愛を求める旅に。僕も、仲間以外の人達には誰にも相手にされない。気持ちが解るんだお!!」

(´・ω・`)「相手にされないだと?嘘をつけ。何故なら君は――」

彼の名前はショボン。
何かを言いかけた所で涙が溢れ、その先は言えませんでした。

( ^ω^)「ブーン!ブーン!」

(´・ω・`)「何をやっているんだい?」

( ^ω^)「僕は空を飛ぶのが夢なんだお。だから練習してるんだお」

(´・ω・`)「…君ならきっと飛べるさ。もうすぐ飛べる」

魔王のブーンを見つめる瞳はあの村人達の馬鹿にした瞳とは違い、真っ直ぐな瞳でした。


980 名前:1 ◆iXiOde3yG. 投稿日:2005/11/28(月) 18:20:21 wvRCTomwO
一行は旅をします。
長い長い旅をします。

旅先では色んな愛で溢れました。

狼は新しい森で植物を愛し、人の傷を舐めました。世界一穏やかな狼として愛されます


ツンデレラは新しい城下町で人の話を聞き、涙を流します。やがて彼女の元にたくさんの哀しみを背負った人々が訪れました。
彼女は世界一人を癒す少女として愛されます

魔王はその城下町の城主。
彼は貧しい人々にお金とパンとシチューを与えます。
彼は世界一優しい魔王として愛されます。

4人は方々に散りました。
でもブーン?なんで貴方は愛されないの?


982 名前:1 ◆iXiOde3yG. 投稿日:2005/11/28(月) 18:29:22 wvRCTomwO
あの寂しい村に戻ったブーンは一人、悲しみに暮れました。

( ;ω;)「えーんえーん。僕は何で一人、愛されないんだお」

悲しみに暮れる可哀想なブーン。そんな彼の元に一行が訪れました。

( ^ω^)「みんな!来てくれたのかお!?ありがとう!!さあ上がって上がって」

皆が来たら、悲しみも吹っ飛びます

一行「……。お邪魔します」

( ^ω^)「フフ!久しぶりだお!元気にしてたお?」
ツンデレラ「ブーン?そこに居るのね?感じるわ」
( ^ω^)「…え?」
(´・ω・`)「君は哀しみに沈む僕たちを救ってくれた」
('A`)「……お前のお陰で俺たちは愛された」
(;^ω^)「ドクオ!?ショボン!?」
ツンデレラ「貴方が目の前に現れた時…今でも私達は忘れない…」

(;^ω^)「……!!…」
( ^ω^)「……………」

ブーンは全てを思い出しました


985 名前:1 ◆iXiOde3yG. 投稿日:2005/11/28(月) 18:43:10 wvRCTomwO
旅立つ前のブーン。
彼は愛されない寂しさと、嫌われる悲しみで食事も喉に通りませんでした。
そして彼はそのまま倒れ、息を引き取りました。

死んでしまったブーンは、『世界一愛について考えた人間』として、神様から役目を授かりました。

神「ブーンよ。お前は誰よりも愛について考えた。そんなお前は下界に行き、愛されない人間の前にのみ姿を現し、助けるのだ」

ブーンは全てを思い出しました。
この愛が無くなりかけた世界は、
ブーンが助けた三人のお陰で愛で溢れた世界となりました。
そして役目の終わったブーンは手を広げて飛び起ちます

( ^ω^)「僕は生きている時誰にも愛される事は無かったお。…でも今は、かげがえの無い大切な友に愛されている。もう僕は思い残す事はないお!!」

( ^ω^)「だから…だからさようなら!!皆大好きだお!!ブーーン!ブーーン!」

一行「ブーン…ありがとう…さようなら…」

一行は今でも時折思い出すのです。
地面を両手いっぱいに広げて走り回る愛する人を

〜おしまい〜




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